誉王の過去
いろいろあったが、
今回は誉王(よおう)の見方がだいぶ変わった回だった。
元皇太子に比べたら頭もまわるし能力もあるけれど、
やっぱり自分の利権しか考えてない敵役、
というのが誉王の初めの印象だった。
けれどここへ来て、誉王の生い立ちが分かってくる。
詳しくは言わないが、どうも彼は皇后の実子ではないらしい。
それに、たとえ親王でも後継者になれなければ意味がない、
とすさむ誉王の反応からは、彼の内面がかいま見える。
皇宮は皇子にとって、常に品定めされる場所だ。
多くの人がどの皇子についたら得か、
様子をうかがっている。
次の皇帝になる可能性が高いほど人が集まり、
逆に見込みがなければ見向きもされない。
まして誉王は、実母がいない不安定な立場で、
養母の機嫌を取ることで生きのびてきたんじゃないだろうか。
そして皇后は、
誉王が皇帝に評価されることに一喜一憂して
育てたんじゃないかという気がする。
まるでお受験に熱を上げて、
いい会社に入ることがその人の価値、
と子供に刷り込んでしまう母親のように。
というのは想像しすぎだろうか。
誉王と皇后は仲が良くみえるけれど、
根っこは帝位への野望でつながっている気がする。
少なくとも誉王にとって最も重要なのは
「皇帝に認められること=皇太子になること」
だったらしい。
その点において、靖王は恵まれている。
彼は愛されて育ち、
彼を彼自身として見てくれる人がいた。
もちろん、そのせいで大変な苦労もしょい込む。
親しかった人を喪うことは彼を深く傷つけた。
それでも、皇帝に見放されても彼には信じる道があり、
そこに価値を見出すことができた。
一方誉王は、
皇帝に認められることが全てだったから、
それを失った時には絶望するしかなかった。
「結局、私は駒でしかなかった」という彼の叫びは、
悲哀を感じさせる。
とはいえ
こんな人が皇帝になったら、
ちやほやする人を取り立て、
苦言を呈する人を遠ざけて、
民を顧みない冷酷な政治を行っていただろう
とも思ってしまうのだが。